巷の話題:携帯料金4割値下げ

巷では、携帯料金4割値下げ可能との官房長官発言が話題になっています。

一部には、民間事業者の料金に対して政府が口を出すこと自体がおかしいという意見もあるようです。電気料金とか鉄道料金は認可制なので、そもそも監督官庁が認可しなければ料金を定められないため、政府はある意味での料金の決定権を持っています。しかし携帯料金は、かつては認可制でしたが、現在は認可制ではないため、政府としての決定権を持っているわけではありません。この観点から、政府が口を出すこと自体がおかしいという意見をお持ちの方々がいるのだと思います。

しかし携帯料金は認可制ではないことを官房長官が知らないはずがありません。そもそも総務大臣経験をされていて、しかもドコモと日本通信との接続問題(総務大臣裁定事案)を実質的に裁かれたのが当時の菅総務大臣です。なのでこの辺りの仕組みについては詳細にご存知だと思います。

2008年にドコモと日本通信の接続問題が決着した後、急速にMVNO事業者が増加し、今や約900社になっています。これが携帯料金の値下げ圧力になっていることに疑問を挟む方はいらっしゃらないと思います。しかし、接続問題には、まだまだ未解決の問題が山積みになっています。

5月15日開催の公正取引委員会「携帯電話分野に関する意見交換会」に出席しました。この席でも、接続問題に未解決の問題が多いことが取り上げられ、これに対し、有識者の先生方からは総務省に対する厳しい批判も出されていました。

以上の背景と流れからすれば、いよいよ総務省は接続問題に対して本腰を入れて取り組まれるものと期待しています。先週、8月23日に開催された情報通信審議会の総会において、総務省は、「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」という内容で、具体的に6つのテーマに関して、情報通信審議会に諮問をかけました。その中にはもちろん、モバイル市場の競争環境の確保というテーマも入っています。この辺りを見ていると、今度は本腰入れて取り組んでいただけるものと期待せずにはいられません。

モバイル市場の競争環境をしっかりと整えれば、その結果として現状の4割は値下げに繋がるということなのでしょう。この数値は、当社として試算している数値ともほぼ一致しており、現実味のある数値です。

では具体的にどうするのか? 端的に言えば、未解決な接続問題を全て解決することです。

接続問題には、接続箇所というテクニカルな面と、接続料という経済的な面の2つがあります。前者が進む、すなわち接続箇所が多様になればなるほど、MVNOは、携帯キャリアや他のMVNOとは異なる、差別化したサービスの提供が可能になります。当社が現在実証実験を進めているFintechプラットフォーム、FPoS(Fintech Platform over SIM、エフポス)はその一例です。またu-LTEも同様で、新たな通信サービス、あるいは通信をベースとした多様なサービスの提供が可能になります。

また接続料については、今だに公正な接続料金設定がされておらず、1日も早く適正化されることを多くのMVNOが唱え続けています。例えば接続料算定の年度のズレの問題。これなどは、当社のようにMVNO専業事業者であり、かつ上場している企業にとっては、決算数値がダイレクトに変わってくるので、大きな影響があります。

当社はお客様へのサービス提供している売上はサービス提供時点で売上を計上しています(当たり前ですが)。しかし、最大の費用項目である携帯キャリアに支払う接続料は、2年前の数値を使っているわけで、ある意味では当社のPLは適正な処理がされていないというのが実情です。もちろん監査法人もこの点を理解しているため、現行の仕組みの中では致し方ないということではありますが、本来であれば、締めた年度の2年後になって初めてPLを算出できるという仕組みを改正しなければ、まともな競争などできはしません。しかも毎年20%や30%接続料が下がっている中で2年というと、この2年の差は極めて大きなものです。

また、そもそもの接続料算定の式が誤っているということも、公正取引委員会の会議で有識者の先生方が指摘されたとおりです。MVNOは応分負担をすれば良いはずですが、この原則からすれば、応分をはるかに超える負担をしているのが現時点の算定式だからです。

2008年にドコモと日本通信とで算定式について合意しました。その時点で算定できる範囲としてMVNOが応分負担するという考え方に最も近い近似値を出す式として、ドコモと日本通信とで合意し、総務省がOKしたものです。しかし、これが途中で変更になり、今日に至っています。その間、裁判や総務大臣裁定の申請と取り下げなど、いろいろなことがあったのでその点は記述しませんが、経緯はともかく、接続料の算定式見直しには本腰を入れて取り組んでいただけるものと期待しています。

Y!mobileやUQのようないわゆるサブブランド問題も、接続問題が解決し、かつ、通話の卸契約の問題が解決すれば、あとは市場において正々堂々と戦うのみです。日本通信はイネイブラーとして黒子の役割を標榜しているので、あくまでも裏方ですが、パートナー企業が市場で正面から戦えるようになる日が1日も早く実現することを期待しています。

巷で話題になっている点についてコメントさせていただきました。

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